電子書籍の進化普及による出版業界構造変化へのインパクト


近年、何度か「今年は電子書籍元年」と言われてきたが、スマートフォンやiPadなどのタブレット端末やKindleなどの電子書籍専用端末の普及に伴い電子書籍市場が活況を呈しつつある。

 インプレスビジネスメディアの調査によると、日本では従来型の携帯電話(フィーチャーフォン)経由の電子書籍の売り上げは2010年度には572億円に達するなどそれなりの市場規模に達していたが、スマートフォン・タブレット端末経由の電子書籍市場規模は2017年度には2,310億円に達し、2012年度から2017年度における日本の電子書籍市場規模の年平均成長率は26.8%と高度成長する予測となっている。(図表1) 出版科学研究所の調査では、2012年度の紙媒体と電子書籍を合わせた国内市場規模は1兆8,166億円である。電子書籍の推定市場シェアは2012年度は4.0%だが、2017年度には13.2%まで増加することが見込まれる。

・・・中略
電子書籍化による出版業界構造変化:著者(図表3)
著者に関する電子書籍化による影響の1つ目は、電子書籍のセルフパブリッシングの仕組みの普及であろう。これまでの書籍の出版の場合、出版社側で採算性が見込める著作物しか出版の対象として扱われなかった。しかし、電子書籍のセルフパブリッシングの仕組みにより、基本的には著者に出版意欲さえあれば、誰でも出版できる基盤が出現したと言える。特殊なテーマで少ない部数しか販売されない書籍でも販売する機会が得られるため、多数の無名の著者に出版する機会が提供されたことになる。

 2つ目の影響は、著者印税率の増加であろう。これまで紙の書籍では、書籍の販売価格の8-10%程度が著者印税であったが、例えば、AmazonKindleストアのセルフパブリッシングのケースでは、原則35%、Kindleストアに独占販売権を付与する場合は70%と大幅に増加している。そのため、著者や著作物によっては出版社を通さず、電子書籍ストアへのセルフパブリッシングをするケースも増えるものと想定される。また、出版社経由の電子書籍化出版の場合でも、これまでの紙の書籍のような固定的な著者印税率から、出版社や出品する電子書籍ストアによって著者印税が10-30%の間で大きく変動することが想定される。

 3つ目の影響は、絶版の取り扱いであろう。これまでの紙の書籍の場合、販売量がいま一つで印刷製本費用などの採算が見込めない場合、短期間のうちに絶版とされてきた。しかし、電子書籍出版の場合、採算性の観点から絶版とする必要性が非常に下がるため、著者としてはうれしい状況になるものと想定される。

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