あうん社

はじめに 　曼荼羅――。

　密教の宇宙観・世界観を一言で表したこの言葉は、「マンダラのような花畑」とか、「マンダラのような絵模様」といったように、ごく一般的な表現でも使われるようになっています。多種多様な存在が混然一体となって調和し、安らぎと癒しを与えるような世界を目の当りにしたときに、直感的な言い方として表現されるのでしょう。つまり、一言では言い表せないような不思議な感動とか喜びを感じたとき、この言葉がおもわず口をついて出てくるのだと思います。

　見る人の目には美しいマンダラ世界がいつでもその扉を開いています。しかし現実社会はさまざまな情報が氾濫し、慌ただしくせちがらく、混沌としているように見えます。地球はますます狭くなり、グローバリズムという名のもとに政治や経済は混乱し、教育、医療、食の問題などを個別に見ても矛盾だらけで課題が山積しています。こうした時代や社会にうまく適応できず、マイナス波動を周囲にまき散らしながら生きている不幸な人達がたくさんいます。そういう人は、自分の不幸不運の原因を外部に求め、ほんとうの意味での自己反省ができていない。自己を省みないマイナス思考の人はさらにマイナスを呼び、心身の不調を起こし、ますます不幸になっていくのです。

　どんな時代であろうとも、この世に生を受けたことは、奇跡です。先ずそのことを肝に命じることです。この奇跡を与えてくれた両親に感謝し、その両親の先の先をずっとたどっていくと地球誕生以前の宇宙につながっていくでしょう。自分という奇跡の命は、悠久の宇宙につながっているという意識を常に持つことが大切です。そして宇宙の真理につながる密教の瞑想を日々の生活のなかで習慣にしていくと、この現実世界にはいたるところに美しい曼荼羅が存在することに気づくでしょう。密教瞑想は、あなたの意識を宇宙大に広げるだけでなく、病があればその心身を癒し、現実世界において幸運を拓く手法でもあるのです。

　とはいえ、初めて瞑想を経験する人は戸惑いがあるでしょうし、慌ただしい生活のなかで宇宙飛行士のような厳しい訓練はできません。そこで本書では、密教瞑想入門のステージ１～４として、無理なく楽しく瞑想を体得できるよう、初心者にもわかりやすく解説したつもりです。また本書では、密教の加持祈祷（ヒーリング）がなぜ現実化するのかという点について、五千件以上の実例経験から述べています。心身の不調や病に苦しんでおられる方においても一条の光明となれば幸いです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　和田　仙心