事業の神様に好かれる法 17カ条

■著者
植木 力著
■出版社

サラリーマンから経営者へ、
その苦労、今だから話せる貴重な体験談。
社会に出る学生、サラリーマン、起業をめざす人、
社員教育本としても
是非、読んでいただきたいビジネス書。

株式会社かんぽう
定価 1500円(税込み)


<もくじ>
プロローグ ベンチャーが社会貢献する時代
第1章  小さな企業にもミッションがある
第2章  起業の潮時を逃すな
第3章  ベンチャー起業の壁と落とし穴
第4章  企業イメージとメディア戦略
第5章  事業の神様は細部に宿る
第6章  カンボジアで見たキラキラ星
全章のまとめ 『事業の神様に好かれる法 17カ条』
あとがきにかえて 成功ってなんだろう

プロローグ ベンチャーが社会貢献する時代

 カンボジアの子どもたちに文房具を贈りはじめて約五年になります。小学校の新校舎も四年前に建設・寄贈し、今はさらに大きい中学校舎の寄贈を計画中です。

「カスタ君クッキー」の収益の中からはブランコやシーソー、滑り台などを寄贈していますが、この著書収益もカンボジアの子どもたちが喜ぶ事業に役立てるつもりです。日本でもカンボジアでも人気者になったカスタ君が私に使命を与えているように思えてなりません。

 大日本スクリーン製造株式会社の社内ベンチャー制度から誕生した株式会社カスタネットは、「オフィスのことなら何でもおまかせ」を売りにした通販会社です。そんな会社がなぜクッキーの販売までするのかと、不思議に思われる方が少なくありませんが、私にとっては一環したビジネス戦略に基づく実践でした。企業の社会的責任(CSR=Corporate Social Responsibility)としての非営利活動を、営利のビジネスと並行して具体化していく、という実践です。

 従来型のビジネスは先ず利益追究があって、その利益に余裕があれば何らかの形で社会に還元しましょうという考え方です。だから、利益はあっても余裕がなければ社会還元はできないし、その必要もないということにもなります。企業は、経済活動によって雇用を生み出し、税金も納めているのだからそれで充分に社会貢献をしている、と言われたら確かにそうです。黒字経営を続けていくことが社会貢献になっている。私もそのことは否定しません。

 はたしてそれだけでいいのだろうかという大きな疑問が、会社を興したときから私の頭にはありました。だから、創業一年目に大赤字を出したにもかかわらず、二年目からボランティア活動を開始しました。「そんなことは赤字会社がすることじゃない」と言われ、二年目も大赤字を計上したけれど、私は止めなかった。止めていたら、とっくに会社は潰れていたでしょう。むしろカンボジアに文房具を贈りはじめたときから、私は何か大きな手ごたえを感じ、三年目にはそれが確信に変わっていたのです。名刺代わりのボランティアカードには「ベンチャーが社会貢献する時代」と書いて配りました。

 その確信というのは、企業の営利活動と社会貢献活動(非営利活動)は決して相反するものではなく、むしろ親和性があり、車の両輪のようなものということです。この観点から見ると、市場原理で金儲けだけを追求するビジネスモデルは、たとえそれが大成功を収めたとしても私は心情的に納得できない。たとえば、近頃のファンドのように利益さえ上げればいいという企業活動はいずれ世間から見放される、とも思うのです。

 最近の心ある若者たちの多くは、従来型のビジネスで利益を出している企業よりも、ビジネスとCSRを同次元で追求している企業を支持しています。そういう企業こそが理想像と思う若者が増えているのです。このことは、私がボランティア活動を始めてから強く感じたことでもあります。

 もちろん、いつの時代にも銭儲けに熱中する人間は少なくないし、「金があれば何でもできる」と豪語したホリエモンのような若者たちも少なくありません。しかし遅かれ早かれ、自己中心的で企業モラルや理念のない会社は没落します。ビジネスモデルの細部に宿る事業の神様は、CSRが大好きだからです。事実、カスタネットは社会貢献を企業理念としたから事業の神様は微笑んで救ってくれたのです。

 私が本書のなかで伝えたいことは、企業の社会的責任(CSR)を中心テーマとした企業活動であり、そのビジネスモデルのあり方です。また、どのようにしたら企業の利益追究とCSRを矛盾なく、しかも楽しくできるかという私なりの経験と細部のノウハウを伝えたい。言い換えると、事業の神様に好かれる方法です。

 今世紀のビジネスのあり方は、環境や社会問題と真っ向から取り組み、それを解決しながら事業を展開する「ソーシャルなビジネス」が本流になっていくでしょう。そうならなければ、この地球という生命体は持ちません。ベンチャー企業も社会貢献する時代なのです。起業してまだ十年もたっていませんが、私はそのことを確信しているし、日本にソーシャル・ビジネスを根づかせ広げるためにも、カスタネットの事業発展と社会貢献でその一役を担いたいと念じています。

 本書は、そんな私の思いと願いも込めて、いずれ起業したいと思っている若い人たちに向けて書きました。本書を読んだ若い世代のなかから一人でも多くの起業家が生まれ、起業家から企業家へ、そしてさらに社会企業家へと自分自身を高めていってくれたら嬉しいかぎりです。

  2008年夏
                                        植木 力

起業ノウハウ全て公開  http://ueki.biz/
著書の感想    http://kyosaijiki.kyo2.jp/