自ろん公ろん無ろんVol.1 手のひらの宇宙
はじめに
この世に起こることに偶然はない、すべては必然である、ということはよく言われる。
ただし、その必然が必然として心底わかっているかどうかは、その人自身の意識の在り方の問題ではあるだろうけれど……。
そんなことを考えていた、新緑の美しいある日。
――そうだ、手のひらの宇宙ブックを出そう、とぼくの頭に閃いた。
これは、気まぐれな偶然の思い付きだろうか? いや、そうではないとぼくは自分に言い聞かせた。
丹波に移住してからこの秋でまる十年、あうん社は設立して二十一年目だ。
そしてこのアイデアは西宮にいたときに一度考えて、その本のロゴマーク(手のひら文庫)もつくったことがある。つまり忘れかけていたことが、この節目の年によみがえり、生まれるべくして誕生したのだ。機が熟したとも言える。「手のひらの宇宙BOOKs」として商標登録を出願し、ロゴマークも新たにつくった。
「手のひらの宇宙もわかるけど、あまりにも抽象的だ。タイトルをつけたほうがいい」
最初にお声をかけた執筆者のお一人からそんな助言をいただいた。『自ろん公ろん無ろん』は、その話のなかから出てきたタイトルである。
さっそく知人・友人に電話をかけまくって執筆をお願いした。
「自由テーマで、自分の今の手のひらの宇宙を書いてください」と。ありがたいことに反応はとてもよく、十人中九人がふたつ返事で快諾してくれた。
こうして24名の執筆者による創刊ゼロ号が日の目を見ることになった。
文章を書くということは自分の意識の流れを文字に表すことである。その人にとっての人生の必然的な何かがそこに表れる。執筆者は思い思いの「手のひらの宇宙」を表現されているが、寄せられた原稿を楽しく読みながらぼくはつくづくこう思った。
――これはまさしく人生のマンダラ世界、多彩な意識の綾織物だ。
本書を手にした読者の方が、誰のものでもない自分らしい「手のひらの宇宙」があることに気づき、そこからさらに書く(参加する)ことに意欲を持たれたら幸いです。
編集人 平野 智照
もくじ
「おおきな歯こども基金」への思い 雨松真希人
木曽深山の祈りと誓い 池田聡寿
ビジネス雑感 ―― TPPとフリー商品 魚住隆太
今、日本戦後史を正そう!! 大西泰鄰
P・F ドラッカーの『日本への遺言』 岡田敏明
二編の「丹波春秋」 荻野祐一
第三創業の只中、のぼる階段はまだ99段ある 小林宏至
気楽隠居のつぶやきと大言壮語 近藤和雄
地域を元気にするビジネスモデル ~外食・中食サービスが変える~ 重森貴弘
紫陽花の約束 志茂佳人
天・女・老――愚自戒抄 千賀貴司
介護サービスから広げる百年の計 田中知世子
浜田中央商店街アーケードものがたり 田原圭子
不沈空母を目指して 田村勇二
嬉し、楽し、職人人生 南部白雲
四季つれづれに ひろこ
男の料理 ―― お気に入りの割烹料理店― 編 福西 裕
腹一つ 船越武英
私の手のひらの宇宙 丸清 峰
山が笑えば、つられ笑い ―― 丹波の里山文化は、誰が継ぐのか? 宮川五十雄
モンゴル力士はなぜ強い? もり・けん
Daydream believer 山口憲一
健康で長生き、そして幸せに生きる魔法の術 山田喜愛
「特定の文化」に関する一考察 吉田泰三