手のひらの宇宙No.2 

2015年4月10日 発行 定価(本体1200円+税)

もくじ

うんちはたいせつ 波部尚樹

<自ろん公ろん無ろんVol.2>
Let it go「ありのまま」の自分に気づける
『エコラージュ_・ワークショップ』を文化に!  飯田真弓
平和と安全と民族の誇り  大西泰鄰
人は失敗から学べるか― 私的失敗学入門講座― 岡田敏明
もうあきまへん、「未来予想図」無しでは。 小松範行
ねこ談義 清水谷由
地方創生を「承認マネジメント教育」から 正田佐与
男の料理2 ―お気に入りの鉄板焼き店―編 福西裕
おもしろいヤツらとともに、地域課題を解決したい 前川進介
ふるさとの川づくり  
灯ろう流しとよみがえる不登校生徒たち 南谷雄司
私が大学で教えている理由~すべては人とのご縁~ 松本茂樹
関西の食文化と経済の断章 吉 田 泰 三

<縁とルーツVol.1>
季の床掛け 足立青宙
神秘の笛天の磐笛 大浦勝鬨
父との約束 大久保美喜子
大阪の伝統工芸品職人とその世界 川本隆史
縁の醍醐味 重藤悦男
私の歩んだ道― 社寺建築六十年 竹澤要
小さな歴史 立田英雄
アンタはゴミはい…でも一輪の宇宙です 松井哲造
九つの病気が教えてくれた私の天命 水川明
女の私にできること~元気のおすそわけ 美濃部わこ
連綿と続く山名氏について 山名年浩
私の手のひらにみる宇宙 宮里文子


あとがき

波部尚樹くんの『うんちはたいせつ』を読んで、読者(大人たち)はどのような感想を抱かれただろうか。
おそらく本書の執筆者をはじめ多くの読者が、尚樹くんの素直で豊かな感受性に拍手を送りながら、自分の子どもの頃をふと想い起こしたことだろう。「手のひらの宇宙」はもっと自由な空想にみちておおらかだったなぁなどと、懐かしく思ったかもしれない。
そんな昔を回顧するのもいいけれど、実は、この作文を冒頭に持ってきたのは、瑞々しい作品という理由だけではなく、いくつかの意図を込めている。
その一つは、本書の発行目的(特色)そのものにかかわってくる。すなわち、執筆者の有名無名やキャリアや年齢などを問わず、様々な「手のひらの宇宙」を集めて小さくとも一つの現代史(生活史)をつくるということである。
二つめは、アナログへのこだわり。
近年はデジタル情報があふれかえっている。手軽で便利で役立つ― 実際ITには大変世話になっているが― その反面、どうでもいい泡のようなものも多い。一瞬で消えていく情報という泡の海に回遊するイワシの群れを想像するのは私だけだろうか。
これに対して紙の本はアナログ情報である。出版界でもデジタル化(電子ブック)がすすみ、紙の本がますます売れなくなっているけれど、「記録」としての確かさは紙が勝るし、本の力というものを信じたい(尚樹くんの作文は読書感想文だった)。
三つめは、ローカルな日常からの発信。
日常の小さな手のひらの宇宙から見たら、グローバルスタンダードといった見え透いた潮流や、中央が発するマスコミの情報なども胡散臭いものが少なくない。その点、地に足が着いた生活圏(その人にとっての中央)で、それぞれの人が抱く「手のひらの宇宙」ほどリアルで確かなものはないだろう。本書を、そんな熱い想いと息づかいの聞こえる、多彩な小宇宙のマンダラにしたいとひそかに願う。

孫悟空は觔斗雲(きんとうん)に乗って宇宙を自在に飛び回ったが、結局、御釈迦様の手のひらを超えられなかった。だとしても觔斗雲のような想像力という翼は生涯持ち続けたいものだ。その翼を忘れない秘訣は童心に帰ることかもしれないが、この自由広場の本書のなかで、あなたの手のひらの宇宙を拡げてみてはどうだろうか。読み手から書き手に変わることで、意識のどこかに置き忘れた想像力という翼がふと開くかもしれないから。

末尾ながら、本書の趣旨に賛同して執筆参加いただいた皆さんに改めてお礼申し上げます。

2015(平成27)年3月15日         編集人記す