食と農と里山 VOL.1

手のひらの宇宙BOOKs第1号
26の手のひらの宇宙・人 著
単行本 256ページ 定価1200円(+税)
発行:あうん社
2014年11月11日発行

 本書に登場した「26の手のひらの宇宙・人」は、お一人を除き丹波に来てから出会った方ばかりである。
どういうことをされている人たちなのかはもちろん知っているし、親しくお付き合いさせていただいている。だが原稿を読ませていただくと、知らなかったことや意外な側面が見えてきたり、感心させられることがとても多かった。
皆さんそれぞれにかけがえの無い「手のひらの宇宙」があり、その宇宙のなかで一生懸命、真面目にがんばっているのだなぁ……というのが総じての感想だった。通読すればこのテーマの現代史(生活史)にもなっている。おそらく読者も同様の感想や共感を持たれたことだろう。

 ぼつぼつ編集作業を始めた頃、この丹波地域は集中豪雨(「平成26年8月豪雨」)におそわれ、地元のお年寄りでも「こんなん、生まれてはじめてや」というほど甚大な被害をこうむった。全国各地からボランティアが駆け付け、とくに若い世代の人たちが黙々と汗を流す姿を見て、被災した地元の人たちが感激したのは言うまでもない。私も腰痛の不安をかかえながら参加してその様子に感銘をうけた。 
丹波は昔から災害の少ない地域と言われてきたが、気候変動の激しい昨今その神話も崩れかかっているように思う。しかし考えてみれば日本は昔から天変地異の多い国であり、飢餓の不安が薄れたのもこの百年足らずである。であるからこそ先人たちは、いのちの源であるこの里山を大切に守ってきた。東日本大震災で故郷を失った人々の悲しみを想うと複雑な気持ちになるが、まえがきにも書いたように「食・農・里山」は一つのものであることを今回のような災害が改めて教えてくれる。

 タイトルの副題に「丹波発」としたのは、26人中丹波の人が半数以上ということだけでなく、このテーマの「VoL.1」は丹波からスタートという思いも込めている。VoL.2以降はさらにエリアを広げて進めていく。食・農・里山の現代史を目指して――。
本書の執筆者たちは、それぞれの視点と熱い思いからこのテーマに真摯に取組まれている。これからも各自の「手のひらの宇宙」がさらに大きく広がることを祈念して、末筆ながらお礼と感謝の言葉に換えさせていただきたい。(「あとがき」より)

 もくじと「はじめに」