4. 住吉大社を訪ねて

2011.10.3

 

住吉神社の総本宮
10月3日(月)、白雲さんと住吉大社(大阪市住吉区)を訪ねる。
現在、白雲さんは大社から各種看板の受注を得ており、この日も看板の下絵デザインの打ち合わせに行くというので同行することになった。
住吉大社は、全国2300社余ある住吉神社の総本宮で摂津国の一の宮、「すみよっさん」として親しまれ、三が日の参拝客だけで200万人を数えるという。
「住吉の神さまは俗に海の神とされています。正しくは、底筒男命・中筒男命・表筒男命という、イザナギノミコトのミソギハラエに際して海の中から現れた神、および息長足姫命(神功皇后)で、西暦211年、この地に鎮斎になったと伝えられています。実際の年代では干支二運(120年)をくり下げて5世紀初頭と推測されますが、大和政権の玄関口にあたる難波(なにわ)に鎮座して、遣唐使をはじめ大陸との渡航を守り、奈良時代以前より外交・貿易、またあらゆる産業を守護する神として称えられてきました」(大社ホームページ、真弓宮司のご挨拶文より)
住吉大社の歴史によると、
211年、神功皇后・田裳見宿禰により住吉大神鎮祭。
313年、仁徳天皇、難波の高津宮に都を定める。墨江の津が定められる。
731年、『住吉大社神代記』神祇官に言上。
749年、住吉社遷宮の初見(興福寺略年代記)。
758年、孝謙天皇勅願により住吉神宮寺の創建。
すなわち、住吉神宮寺の創建から数えると1250年余ということになる。

大阪住吉の起源となる
海の神さまというだけに、その昔は海に近い入り江にあった。それを物語る大阪市の地名に、住吉区、住之江区、住吉区の墨江などが残っている。それらは住吉大社を起源とした地名だが、戦後の埋め立てなどにより古代の海はだいぶ遠のいている。
海の神さまといっても神様は時代の要請で自由自在に変化する。住吉大社も「五穀豊穣・無病息災・国家の隆昌と国民の安泰を祈る」本宮として発展してきた。かつて信長が武力で手に入れた自由貿易・自治の町として栄えた堺もすぐ隣にあり、商人・庶民の町大阪のなかで、商売の神様にもなった。なにはともあれ、日本の神様はどのようにも解釈でき、融通無碍で楽しいですねぇ・・・。
現在、建て替え計画がある「種貸社」という末社も商売人の信仰を集めている。種というのは稲種(五穀豊穣)のことで稲の収穫の守護神だったが、お種銭(資本)が増えるという意味にもなり、大阪商人のあいだでは集金の守護神にもなった(家の安全、幸福の守護神でもある)。ちなみに現在、白雲さんは種社の建物周りの賽銭箱の制作などの相談を受けている。
境内入口の周辺にずらりと並ぶ大きな石灯篭には商売人らしい寄進者の名が刻まれている。商売の繁栄とともに発展した住吉大社は、和歌の神様としても有名らしいが、いずれにしろ、浪速と呼ばれた古代から現代に至るまで、大阪一円の歴史を代表する神社と言ってよい。

 

 

 

 

 


サイン(看板)で広い境内を迷わないように
「第一本宮~第三本宮まで縦に、第四本宮は第三本宮の横に並ぶ縦並びの配置は、全国的にもたいへん珍しく、住吉大社だけの建築配置です。あたかも大海原をゆく船団のように立ちならび、『三社の縦に進むは魚鱗の備え 一社のひらくは鶴翼の構えあり
よって八陣の法をあらわす』とも言い伝えられます」(ホームページより)
この本宮のほかに、大社にゆかりの深い摂社(大海神社、船玉神社、若宮八幡宮、志賀神社)があり、末社(種貸社、楠俍社、大歳社など)も六社建ち並ぶ。これらの建物のあいだには楠木の巨木がうっそうと茂り歴史の長さを物語る。そのうちの一本は日本一の巨木だそうだ。
摂社や末社も数多く、「あたかも大海原をゆく船団のように立ちならぶ」迷いそうな境内を、権禰宜のOさんに案内されて巡る。
「ここに、こういう案内看板を考えているのですが……」といった権禰宜さんの相談を受けながら、白雲さんはマメに写真を撮っている。白雲さんはすでに同社境内にある結婚式場の看板(披露宴入口の看板)を一つ制作・納品しているが、広々とした境内を歩いていると、看板・サインがあってもよさそうな処がいくつもある。住吉大社のシンボルは「うさぎ」とのこと。参拝者が広い境内で迷わないように、うさぎをモチーフにした楽しいサインで案内するという構想もある。境内全体の雰囲気や調和を考えながら、どのようなデザインや形・大きさにつくりあげ、「すみよっさん」に喜んでいただけるか、これからが白雲さんの技とアイデアの見せ所である。
「住吉大社は大阪らしい開けっぴろげなところがあって、堅苦しいものは望んでいないようだけど、遊び心のあるデザインにするにしても品格を落とすようなことはあってはいかんと思う。あくまでも信仰の聖域として、由緒を重んじたなかで現代的な新しさも出す、そのへんの見極めが大事かな」と白雲さん。
このあと、シャープの創業者・早川宅の新築マンションの一室の「欄間制作」のご相談のため、ご親切にも権禰宜さんの車で送っていただいた。