8. 「関西花の寺」25カ所の看板を製作

2013年、創設20周年に向けて
 4月18日(水)11時から、関西花の寺の第16番「浄瑠璃寺」で花法要。これに参詣するため、白雲さんと近鉄奈良駅で待ち合わせて10時過ぎには寺に着いた。
春うららかな陽気で汗ばむほど。駐車場から山門に向かう細い参道の右手には、アセビの古木が十数本続いている。高さ3メートル以上はありそうで、満開時期はやや過ぎているようだが、スズランに似た小さな白い花をあふれんばかりに咲かせていた。

 丹波でも近くの山に入ると大きなアセビの木はたくさん生えているが、これほど幹の太い大株は見たこともない。樹齢は数百年か?「もともと山のアセビで、昔はもっと茂っていた」とホームページに紹介している。参道の左側にはハクモクレンやモモ、サクラなども咲いていた。

 25カ寺ある関西花の寺は古刹が多いが、千年の歴史を刻む浄瑠璃寺は、三方を小山に囲まれた境内から建物もその雰囲気が漂っている。事実、庭園の池をはさんで東に向いた本堂(九体阿弥陀堂)と西に向く三重塔も国宝指定のある建物である。池浄瑠璃寺庭園も「特別名勝及史跡」ということで修復の最中であった。 
九体阿弥陀堂には、金箔の丈六像(224cm)の中尊と半丈六像(139~145cm)、合わせて8体の阿弥陀如来像(国宝)一列に並び、重文の吉祥天女像も祀られている。この日は秘仏として普段は見られない吉祥天女像も開扉されていた。三重塔にも薬師如来(重文・開扉日限定)を安置されている。つまり浄瑠璃寺は、西方浄土信仰がさかんだった平安末期ころの典型的な寺院建築や庭園なのだ。
法要がおこなわれている本堂内は参詣の人たちであふれていたので、私は庭の隅で僧侶の声明・読経を聞いていた。ぽかぽか陽気の日差しに当たりながら庭の景色をぼんやり眺めていると、千年昔の人たちの想念が浮かんでくるような気がした。当時の人は本堂の阿弥陀仏に祈り、この庭を眺めつつ西方浄土を夢見たのである。信する心あれば西方浄土は存在し、生まれ変わりもできるわけだ。
僧侶の読経のあとは筑前琵琶の演奏と謡の奉納があり、2時時間ほどで法要がおわる。記念撮影のあと、車で20分ほど走り郊外レストランの会場へと移った。その会食の席で、南部白雲夫妻と木本南屯夫妻、そして私の5人が、観音寺住職・小藪実英師から紹介を受けた。
観音寺は関西花の寺・第1番で、小藪師は事務局長。南部さんと私は10年以上前に、『木彫刻と建築』の取材のため観音寺を訪れているが、南部さんが小藪氏に新たな看板の提案をしたのは昨年暮れのことだった。その提案が通ったことで、小藪師から花の寺住職の方々に紹介を受けるために呼ばれていたわけである。



 

 関西花の寺は、発起人である小藪師をはじめ何名かの有志僧侶によって20年前に開設された新霊場だ。正式には来年5月が創設20周年ということで、25カ寺の看板を南部さんが創ることになった。現在もその看板はあるが、それぞれの寺の花を彫刻した看板を新たにつくる。木本南屯さん(高野山大学名誉教授)はその看板の字を書く。そした私はといえば、『花説法』という本の3冊目を出版する。ここまで話がすすんだのは、すぐれた企画マンで実行力もある小藪師のおかげである。小藪師は、自ら絵筆をとり何冊もの詩画集や日めくりカレンダーなども出版されている。
白雲さんは、この日のために用意した看板の見本を見せながら説明した。約1年後には近畿一円に点在する関西花の寺に、南部白雲作の看板が掲げられることになる。            平野 隆彰


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